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親の背中を見せることが最大の教育

見えない学力

「将来、人に迷惑を掛ける大人にならないように、ルールを守り、周りに合わせることを学びましょう。」

日本の公立小学校では、このような指導が主軸として行われています。

そして、その教育の結果として、「大人の言うことには従わなければならない」という、人に自分の思考を委ねる人間、周りに迷惑を掛けることを恐れるあまり、極度に失敗を恐れる人間が出来上がっていくのです。

しかし、同じ公立の学校でありながらも、その主軸と相反するユニークな教育を行っている学校もあります。

それが、大阪市立大空小学校です。

『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』という書籍にもなっています。

この大空小学校では、4つの力を付けさせることが教育目標として掲げられています。

「人を大切にする力」

「自分の考えを持つ力」

「自分を表現する力」

「チャレンジする力」

の4つです。

このようなテストの点数では測ることのできない「見えない学力」こそが生きる力につながると、初代校長、且つ、本の著者でもある木村泰子氏は主張しています。

この大空小学校では、子どもも、教師も、自分が間違っていたと感じた時は、校長室に行き、自分の行為を振り返る「やり直し」が行われるのです。

教師も反省するという「大人が失敗を自ら認め、改善していく姿」を見て、子どもたちは成長していくのだと著者は伝えています。

大人の姿こそが最大の教育となるのです。

ミラーニューロン

脳の中には、ミラーニューロンという細胞があります。

これは、別名で「モノマネ細胞」とも呼ばれ、他者の行動を観察しているだけで、自分もその行動を追体験しているかのように、鏡のような反応をする細胞のことを示しています。

つまり、人間は無意識に自分以外の人間の行動を真似る細胞が働いているのです。

それは、接している時間が長ければ長いほど、そして距離が近ければ近いほど影響を及ぼします。

つまり、子どもにとっては、親や教師こそが、真似をすべき存在として認識されるのです。

「人は見た目が9割」という考えがあります。

これは「容姿が優れていることが全て」という考えでは決してありません。

人間は主に視覚から情報を得る場合が多いです。

だからこそ、その人の表情、柔らかな所作、慈愛溢れる目、凛として立ち向かう姿勢、全身で表す愛情表現、そういった雰囲気も含む見た目を視覚情報として受け取っているのです。

子どもを伸ばす言葉掛けももちろん大切です。

しかし、そのような聴覚情報よりも視覚情報に触れている量の方が圧倒的に多いのが事実です。

だからこそ、温かい人間という内側から溢れる見た目が伴っていなければ、温かい声掛けをしても、いずれその情報は脳から淘汰されてしまうのです。

親自身が自分を変えていくことが子育て

「子育ては、親の育て直しである」とよく言われます。

大空小学校初代校長の木村氏も、「親自身が4つの力をつけ幸せになっている姿を示さなければおかしいではないか」と述べています。

芸能人として活躍している武井壮も、「親が夢に挑戦し、次々と夢を実現させていくその後ろ姿を子どもに見せることだ」と話しています。

親自身が自分を振り返り、成長させていくことで、子どももまた、成長していくのです。

その上で、木村氏は「人を大切にする力をつけたかったら正解を言わない」「正解を問い続ける力が見えない学力である」と述べています。

大人が正解を言ってしまう方が楽ですし、早いです。

しかし、それでは子どもが、自ら問題解決していく力を育む機会を奪ってしまうのです。

心掛けたい親の教育行為

親の背中を見せることが最大の教育効果とするには、様々な日常の行動を心掛ける必要があります。

ここでは大きく4つのことに焦点を当ててみます。

1つ目は、子どもの話に口を挟まないということです。

一言も口を挟まずに子どもの話を聴くことで、「安心」が生まれます。

木村氏は「安心があれば、結局子どもの学力は自動的に伸びていく」ということを経験から語っています。

それぐらい、「安心」の優先順位は高いのです。

2つ目は、子どもが自分でやろうとしている場を先回りして奪わないことです。

心配するあまり、もしくはスケジュールがあり、親が先回りしてやってしまいたい機会は日常に散りばめられています。

しかし、心配するということは信じていないということ、スケジュールに合わせるということは親の都合で進めていることに当てはまってしまいます。

ただ、日常では様々な突発的なことが起こるものです。

そんなときは「何か私にできることはある?」と子どもに声を掛けることが大切です。

子どものことを対等な立場として尊重している姿勢は、子ども自身にも伝わるはずです。

3つ目は、文句ではなく意見を言うことです。

社会では会議で話し合いをする時に、「代案を示さずに、ただ文句だけ言う」ことは敬遠されます。

だからこそ、何事にも、文句だけで終わるのではなく、「では、こうしてみたらどうか?」という意見にまで変化させ、建設的な話し合いにしていくのです。

そのような親の姿勢は、必ず子どもに移っていきます。

その積み重ねで、何事にも前向きで、主体的な人間性というものが育まれていくのです。

そして4つ目は、言行一致の行動を心掛けるということです。

子どもにチャレンジする力を求めるのであれば、親自身もチャレンジすることを伝える。

他人を思いやる力を求めるのであれば、自分の子どもだけでなく、周囲の子ども、自分の人生に関わる人たちのことまで思いやることを伝え、実行する。

その「口にした以上は行動する」という言行一致が信頼となります。

そして、「親の言葉は常に真実味があり大切なのだ」ということを、無意識に学んでもらうのです。

ただ、親も完璧ではありません。

だからこそ、「私もできていない部分があるけれど、一緒に成長していこう」という思いを伝えながら、共に進んでいくという姿勢が大切だと思います。

子どもへ魅力ある未来をプレゼントするために

今回は、かなり現実的な、且つ厳しいとも受け取れる内容をお伝えさせていただきました。

ただ、私共の教育事業に興味をもっていただいている保護様は、子どもの可能性を信じている、もしくは主体性のある方々だと信じているからこそ、本音を語らせていただいた次第です。

「このような手段さえあれば、子どもは簡単に変わる」という言葉は、まやかしだと思っています。

教育は魔法でも何でもなく、地道な営みの結晶だと思うからです。

そして、この「大人が変わる」という言葉は、我々の教育事業自身にも向けられているという自戒の意味を込めて発したものでもあります。

だからこそ、私共は保護者の皆様とつながっていきたいのです。

完璧な大人などこの世には存在せず、誰しも未熟な面を持っています。

もちろん、私共もそうです。

私共と保護者の皆様が支え合い、補完し合う中で、大人自身が前向きに成長していく関係をつくる。

その上で、家庭教育という場を通して、そのつながりを子どもにも広げていく。

大人自身が、未来に希望を抱き、自分の個性を大切にしながら、楽しく、豊かな人生を送っている。

その姿を、未来を担う子どもたちにプレゼントしたいと考えています。

もし、私共の教育事業のその思想に賛同していただけるのであれば、その時は、共に歩み、共に前を向き、共に励まし合い、共に成長していくことができればと思っております。

最後まで読んでくださりありがとうございました。