勇気の心理学
人が「努力しよう」「挑戦しよう」「協力しよう」と思うときはどのようなときでしょうか。
それは、「自分には能力がある」「自分には価値がある」と思えるときではないでしょうか。
アルフレッドアドラーが提唱した「アドラー心理学」では、そのような人の気持ちを「勇気」と表現します。
人は、「勇気」で満たされていると、困難を克服する活力が湧き上がり、放っておいても、「もっと、もっと」とさらなる先を目指すことができる。
それが、アドラー心理学の主たる主張です。
そして、その勇気を生み出すために必要なことは、何も大げさに褒めたり、活躍させたりという特別なことをするわけではありません。
普段からできている「当たり前」に注目することが重要なのです。
この記事では、アドラー心理学の観点を用いて、「子どもに寄り添う教育」とは何なのかを述べていきます。
「当たり前」に注目するとは?
「当たり前」に注目するとは、子どもが何か特別なことをした場面ではなくても、感謝の気持ちをもって接し、認め、感情を共有するということです。
これは、「注目していなかった場合」を考えると分かりやすいです。
例えば、「公共の場所で過度に騒いで叱られる子ども」がいたとします。
その子どもは、常にそのような行動を取り、叱られるというパターンに陥っていることが多いはずです。
なぜ、叱られることが分かっていながら同じような行動を繰り返すのでしょうか。
それは、「叱られることでしか注目を集めることができない」からです。
日常から子どもに注目し、子どもの存在を認め、一緒に過ごす時間を大切にしていれば、このような行動はほとんど起こることはありません。
では、逆に「よい行動を褒める」ことのみを行った場合はどうなるのでしょうか。
褒めるということは、「その行動を繰り返してほしい」という親の価値観が反映されます。
「勉強をしたとき」「手伝いをしたとき」だけに注目を続けていると、親の機嫌を伺う子どもになってしまいます。
大切なのは、バランスです。
褒めることも大切にしながらも、当たり前のことを大切にしていく必要があります。
ささいな手伝いをしてくれたときも「ありがとう」を大切にする。
「楽しいね」と一緒にいる時間を大事にしていることを伝える。
「信じているよ」と信頼を示す。
「あなたはがんばっているよ」と過程を認める。
そして、言葉にしていないときも、常にそのような姿勢や気持ちをもちながら接する。
そうすることによって、子どもの勇気は常に満たされていきます。
人間の行動は95%が「できている」行動です。
5%の「できない」行動にばかり注目して、「できている」95%を無視してしまう。
それではエネルギーが湧くわけがない。
それが、子どもに寄り添う「アドラー心理学」のベースなのです。
子どもに寄り添う姿勢 8つのポイント
ここで、アドラー心理学における「子どもに寄り添う・勇気を与える心構え」を記していきます。
これは、子どもだけではなく、人間関係全てにおいて共通している大切な考え方です。
①あるもの探しを行う
その子どもが「やっていないこと」に注目するのではなく、「できていること」に注目する。
つまり「当たり前に注目する」ということです。
心理学ではこれを「資源(リソース)」と表現します。
②行為と人格を分ける
子どもが叱られるような行動をしたときも、その行動を止めるように伝えますが、「だからあなたは駄目なんだ」といった言葉のように、存在そのものを否定しないということです。
これは感情的にならず、言葉によって「その行為がなぜいけないのか」を伝えるということでもあります。
③ありのままを認める
「子どもが存在するだけでうれしい」という気持ちを抱いて接するということです。
言葉にしなくても、相手を見つめる目、表情、仕草からそれは伝わります。
子どもが命をもってこの世に誕生したときは「存在するだけの感動」を抱いていたはず。
存在していることを「当たり前」ではなく「有難い」と捉えるのです。
④信頼を示す
人間は自分のことを信じている人が一人でもいれば、生きる活力が湧いてきます。
そして、「最も信じてほしい人」は、やはり親であるはずです。
「信じているよ」「あなたなら大丈夫」「次にがんばればいいじゃない」。
そのような「結果に注目するのではなく、子どもがもっている力そのものを信じている姿勢」が、勇気を与えます。
⑤長所に注目する
子どもが苦手なことを克服しようとしていることも非常に大切です。
そして、さらに大切だといえるのは、その子どもの長所を伸ばすことです。
長所を伸ばすからこそ、短所が小さく見えたり、短所が逆に魅力になったりします。
親の「長所に注目する」という視点は、そのまま子どもに受け継がれ、自分の長所を生かす子どもに育っていきます。
⑥貢献に感謝する
職場の同僚であれば、些細なことでも「やってくれたことに感謝」している人は多いのではないでしょうか。
感謝された相手は、「人の役に立てた」とやりがいを感じ、自信を蓄えていくはずです。
それは、もちろん子どもも同じです。
一緒にいることが長く「当たり前」に感じてしまうことがあっても、「ありがとう」を欠かさない。
そうでなければ、やはり、「心の潤い」が少なくなってしまうでしょう。
⑦努力や進歩に貢献する
これは、「結果ではなく、過程を褒める・認める」ということです。
非認知能力といわれる「生きる力」を育てる上でも大事な視点です。
人間の価値は、生み出した結果で決まるのではなく、立ち向かっていく姿勢で決まることを伝える。
そうすれば、何事も立ち向かうときに、心の底から勇気が湧いてくるはずです。
⑧悩みに寄り添う
これは、「ただそこに一緒にいる」ことを大切にする考え方です。
子どもがよろこんでいたら、共によろこぶ。
子どもが涙を流していたら、共に流す。
相手をどうにかしようとするのではなく、ただただ、感情と時間を共有するのです。
その「慈愛に満ちた」ともいえる姿勢が、子どもを強くしていきます。
子どもが勇気に満ち溢れている社会をつくるために
子どもが勇気をもつために必要なのは、「自分の能力や価値を信じる力」です。
そして、そのために必要なのが、「成功体験を適切に積むことができるカリキュラム」と「寄り添ってくれる存在」です。
成功体験を積むために必要なのは、着実なスモールステップで学習のレベルを上げていくこと。
飛び級教育システムラボでは、その点を重点的に検討し、「スーパースモールステップ」として、カリキュラムを組み立てています。
人間は本来、成長に喜びを感じる生き物です。
1つ1つ確実に達成できる階段を、1段1段登っていく。
すると「大抵のことは自分で達成していくだけの力があるんだ」と子どもは自分の力に自信をもつことができます。
ただ、我々のカリキュラムだけでは片手落ちなのです。
「自分の能力」に自信をもったとしても、その能力が通用しなくなった場面に出くわせば、その自信は崩れ去ってしまうかもしれません。
能力に過信して、能力がないと決めつけた人へ、心ない言葉を発してしまうかもしれません。
だからこそ、「能力があろうとなかろうと自分の価値を信じてくれる存在」が必要です。
そして、その役目を我々が一番お願いしたいのが、教育に理解ある親御様なのです。
その両者が揃ったときに、子どもたちに、お子様に、「真の勇気」を与えることができるのではないかと思っております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。